「素顔のインドを撮る旅」バイクで旅する写真家・三井昌志さんに旅写真の魅力をきいてみた!

先日、ご紹介させていただいたインドのバラナシという古い歴史を持つ街で写真を撮る「素顔のインドを撮る旅」ツアー(GNHトラベル&サービス主催)に同行し、参加者たちに印象的な写真の撮り方をレクチャーしてくれるプロカメラマンの三井昌志さん。

アジアの辺境に単身で渡り、現地でバイクを調達したうえで、「笑顔」と「働く人」をテーマに写真を撮りながら旅し続けている写真家です。

 

はじめて旅に出て、人の笑顔を撮ることに魅せられた

三井さんは大学卒業してから2年間、機械メーカーで働いた後、「このまま他人の敷いたレールの上に乗っていていいのだろうか? 一度、レールを降りてみて、自分の足で歩いてみたい」と退職。ちょうどそのとき発売されたばかりのデジタル一眼レフカメラを片手に、10ヶ月にも及ぶユーラシア大陸一周の旅を敢行しました。

その際に撮影した写真が評判となり、写真展開催後すぐに写真集を発売。写真集が人気となり、その収入をもとに再び長旅に……。冬になると旅に出て、帰ってきたら写真集出版などの仕事をして、また旅に出るという生活を繰り返すようになったという異色の経歴の持ち主です。

そもそも、カメラなど習ったこともなく、写真家になるつもりで会社を辞めたわけでもなく、旅に出たわけでもない。ただはじめて旅に出て、人の笑顔を撮ることに魅せられた。撮った写真を多くの人に見てほしいと考え、ホームページ「たびそら(http://tabisora.com)」を立ち上げたという。

以降、写真家としてアジアを中心に旅を続け、人々の飾らない日常と笑顔を撮り続けている。旅の定番スタイルは現地でバイクを調達して、行き先を決めずに移動するという。

今回は、そんなバイクで旅をする写真家・三井さんにお話を伺ってみました。

 

旅のスタイルが確立したことにバイクの存在が大きい

BLOM編集部(以下BLOM):なぜこんなに魅力的な写真がとれるのですか?

三井さん:もちろん写真の技術的なこともあるんだけど、自分が気持ちよく撮影できる旅のスタイルを確立したことが大きいと思います。最近はもっぱらアジア各地をバイクで旅しています。

 

三井さん:僕は観光地や遺跡というものにさほど興味がなくて(だからインドを5周もしているのに、いまだにタージマハルに行ったことがない)、ごく普通の人が当たり前に暮らしている町や村に行くのが好きなんですが、バスや電車だとなかなか辿り着けないようなマイナーな場所にも、バイクだとわりと簡単に行くことができるんです。

 

 

三井さん:僕の写真にとって、バイクという移動手段がとても重要な役割を果たしているのは間違いありません。

 

BLOM:なるほど、近年はバイクでアジアを旅することが多いというのも頷ける話ですね。ちなみに三井さんは現在もインドをバイクで一周中だそうです。

BLOM:ところで、いままで危険な目にあわれたことはないのですか?

三井さん:インドに危険なイメージを持っている人もいるかもしれないけど、実はとても安全で旅しやすい国です。もちろん観光地には小ずるい詐欺師とか、ぼったくり土産物屋とか、怪しい連中もいるけど、普通のインド人はすごくいい人です。優しくて親切。そこは強調したいですね。インドに限らず、アジアの国々は基本的に安全だし、暴力的に金品を奪われたり、テロに巻き込まれたりといった経験は一度もありません。

 

三井さん:僕が一番気をつけているのは交通事故ですね。バイクって無防備な乗り物だから、ひとつ間違えば死ぬ危険性がある。アジアの交通事情は劣悪なので(特にインドは無茶苦茶)、自分の力ではどうにもならない部分もあるけど、いつも細心の注意を払って運転しています。

 

BLOM:確かに、事故は自分で防ぎようがない場合も多いですからね。

三井さん:以前、ベトナム北部を旅していたときに、山道の落石を避けきれなくて、崖の下に転落したことがあります。あのときは「俺、死ぬかも」と思いましたね。ほんの1秒か2秒のあいだに、過去の記憶が走馬燈のように駆け巡った。幸いにして、落ちた先が田植え前の田んぼだったので、やわらかい土がクッションになって奇跡的に無事だったんですが。ほんと、幸運でした。

 

三井さん:去年、インドを旅していたときには、突然道ばたに飛び出してきた野良犬とバイクが衝突して転んでしまって、あばらと手首の骨にヒビが入る怪我を負いました(病院には行かず、自然治癒しましたが)。3ヶ月前にもミャンマーの山奥で転んで、そのあと1ヶ月ぐらいはあばらが痛かったですね。

 

 

BLOM:なぜインド・バラナシ ツアーを開催しようと思ったのですか?

三井さん:日本では定期的に写真教室を開いているんですが、そこでは教えられないことがたくさんあるのが、なんとももどかしかったんです。旅写真の基本は「街を歩いて、人と出会って、そこで感じた新鮮な驚きに対してシャッターを切る」ということなんだけど、それはいくら言葉を尽くしても伝えることが難しい。やっぱり実際にインドを歩いてもらう以外にないんだって気付いたんです。

 

三井さん:バラナシという街は、インドのあらゆる要素が詰まった街です。迷路のように複雑で、あちこちに野良牛がいて、光と影のコントラストが非常に強い。有名な観光地でもあるんだけど、それ以上にヒンドゥー教徒の心のよりどころとしての存在感が際立っています。インド人の宗教に対する気持ち、死生観、人生観といったものが濃密に表れている街なんです。

 

三井さん:僕は何度もバラナシを歩いているけど、訪れるたびに新しい発見があり、驚きがある。もちろん被写体には事欠きません。一緒に写真を学んでもらうのに、バラナシ以上にふさわしい街は他にはないと思います。

 

BLOM:なんだか、今すぐにでも行きたくなってきました。ちなみに、以前ツアーに参加された方々はどのような感想ですか?

 

 

三井さん:去年のツアーは、一眼レフで本格的に写真を撮っている人もいれば、iPhone(!)で参加した「写真に関しては全く素人」という女性もいました。「せめてデジカメぐらいは買ってきてくださいよ」と思ったんだけど、本人はとても楽しんでおられたようなので良かったです。参加者の写真歴やスキルはてんでバラバラでしたが、少人数のツアー(去年は5人でした)なので、ほぼ個人レッスン状態で、その人のレベルに応じてアドバイスすることができました。

 

三井さん:写真の技術論よりも、「風景のどこを見ればいいのか」「どうやって人に向き合えばいいのか」「どのようにしていい表情を引き出すのか」といった気持ちの部分、コミュニケーションの取り方が参考になったという感想を多くいただきましたね。写真のことばかり話していたわけじゃなく、人生相談だったり、好きなアニメの話だったり、話題が多岐に及んだのも楽しかったですね。

 

BLOM:三井さんのカメラテクニックだけではなく、人となり(優しさや経験の豊富さ)も相まって、とても充実したツアーになっているのですね。

 

 

BLOM:最後に、いまツアーに参加しようか迷っている若者にむけて一言お願いします!

 

三井さん:ツアー代金、決して安くはないので、あまり無理はしないでください(って僕が言うのはアレなんですが…)。もし、お金にちょっと余裕があって、「写真を本格的に撮りたい」「インドの奥深さを知りたい」と思っている人がいれば、ぜひ参加してください。あなたの中に眠っている「なにか」に火がともる、そんな4日間になるんじゃないかと思います。

 

固定概念に捕らわれない発想こそが良い写真の原動力

インドならタージマハルに行かなきゃ……といった、固定概念に捕らわれず、また、バイクというツールで自由に旅を進められたことで、三井さんの写真は他の人とは違う印象的な作品となっているのかもしれませんね。

そういった柔軟な思考から生まれる新たな発想こそが、ワン&オンリーな作品を作り上げる原動力になっているのかもしれませんね。

 

参考 –  たびそら
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